岩手 あの一球:08センバツ・一関学院/4 空切るバット /岩手
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080211-00000066-mailo-l03
0―0の同点で迎えた八回裏2死。カウントは0―1。蓄積した疲労は、阿部航が気づかない所で少しずつ、しかし確実に肉体をむしばんでいた。
捕手の矢守悠貴は直球のサインを送った。マウンドの阿部は表情一つ変えず、小さくうなずいた。打者は考えが読めないだろうな、と彼は得意げに思う。ポーカーフェースはこんなとき、役に立つ。
シュッと白球が直線を描いた。外角を狙ったやや低めの直球をとらえたミットの位置は、ストライクゾーンを球2個分程右にはずれた。カウントは0―2。制球が狂い始めた。
阿部は両ほおにプクッと空気を入れて膨らませ、ふーっと息をついた。
依然として威圧する9番打者から、スタンドへと目を移した。「いっぱい人が来てるなぁ。皆の視線が自分に集まっているなぁ」
阿部はそうやって自分を奮い立たせる。一関―聖光の試合を応援する観客が、すべて自分のためにあるように考える。これもまた、阿部なりの処世術である。
術はまだある。阿部は上手投げの、いわゆる本格派ではない。上手と横手の間であるスリークオーター投げ。細身で満足な筋量がない。力を逃さずに速球を投げるため、腕を切るように振り抜いて上腕二頭筋を使う。
重心の移動も大事な推進力だ。左足を上げたとき、反対の右足にしっかり68キロの体重を乗せる。ためた力を、踏み込む左足に伝えるため、尻餅をつくように右尻をグッと落とし込む。こうすると、踏み込みに全体重がかかり、球に力が伝わる...
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